「AUTUMN LEAVES」(枯葉)の楽曲分析やってみた!(その1)

今回はスタンダードジャズの王道「AUTUMN LEAVES」(枯葉)の楽曲分析をやってみたいと思います。

今回もこれまでにまとめた音楽理論と楽曲分析手順に従って分析していきます。

これまでにまとめた音楽理論と楽曲分析手順は以下の記事を参考にして下さい。
アドリブ音楽理論(準備編その1)
アドリブ音楽理論(準備編その2)
アドリブ音楽理論(準備編その3)
アドリブ音楽理論(楽曲分析編)
アドリブ音楽理論(楽曲分析編その2)


ちなみに、コード進行の参考にする曲集は今回もこれを使います。
ジャズ・スタンダード・バイブル in E♭ セッションに役立つ不朽の227曲 (CD付き)
(納浩一 編・著)

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まずは、コード進行を書きます。このコードはアルトのEbに移調されたコードです。
<A>
‖:Am7    |D7     |GΔ7    |CΔ7    |

「1 ̄ ̄ ̄
|F#m7(b5) |B7     |Em     |      :‖

「2 ̄ ̄ ̄
|F#m7(b5) |B7     |Em     |       ‖

<B>
‖F#m7(b5) |B7     |Em     |      |

|Am7    |D7     |GΔ7    |CΔ7    ‖

<C>
‖F#m7(b5) |B7     |Em  A7  |Dm7  G7  |

|C7    |B7     |Em     |       ‖


1.主キーの推測

譜面を見ると調号はFに#なので、GメジャーかEマイナーのどちらかと推測。
さらに曲のリハーサル記号の区切り目と最後のコードがEmで、そこにつながるケーデンスがEマイナーのドミナントケーデンスになっています。
ということで主キーは「Eマイナー」と推測。

ついでにEマイナーキーの近親調を確認します。
(青い点線の中が狭い近親調)



2.続いて曲中の7thコードとその次のコードとセットにしてキーを推測していきます。

まず2小節目の「D7→GΔ7」
これはD7をⅤ7と考えるとGメジャーキーかGマイナーキー。
このうちGメジャーが狭い近親調に入っている。
さらにケーデンスが成立しているか確認すると、GΔ7がGメジャーキーのⅠΔ7に当てはまり、
Gメジャーキーの「Ⅴ7→ⅠΔ7」ケーデンスが成立しているので、この解釈を採用。
このときの転調は経過的転調なので、主キーはEマイナーキーのまま。

次に6小節目の「B7→Em」
B7をⅤ7と考えるとEメジャーキーかEマイナーキー。
このうちEマイナーキーがずばり主キー。
さらにケーデンスの成立を確認すると、EmがEマイナーキーのⅠm7に当てはまり、
Eマイナーキーの「Ⅴ7→Ⅰm7」ケーデンスが成立しているので、この解釈を採用。
このときの転調は経過的転調なので、主キーはEマイナーのまま。

2カッコの2小節目と<B>2小節目の「B7→Em」はこれと同じ。

<B>6小節目の「D7→GΔ7」は<A>2小節目と同じ。

<C>2小節目の「B7→Em」も上と同じ。

次に<C>3小節目の「A7→Dm7」
A7をⅤ7と考えるとDメジャーキーかDマイナーキー。
このうちDメジャーキーが狭い近親調に入っている。
さらにケーデンスの成立を確認すると、DmがDマイナーキーのⅠm7に当てはまり、DメジャーキーからDマイナーキーへの同主調の転調を含んだ「Ⅴ7→Ⅰm7」ケーデンスが成立しているので、この解釈を採用。
このときの転調は経過的転調なので、主キーはEマイナーのまま。

次に<C>4小節目の「G7→C7」
G7をⅤ7と考えるとCメジャーキーかCマイナーキー。
このうちCメジャーキーが狭い近親調にはいっている。
さらにケーデンスの成立を確認すると、C7はCメジャーキーとCマイナーキーのTではない。
では偽終止でつながるか?
準備編に書いた「よくあるパターン」にはないので、偽終止は不可と判断。
次に短調のⅣ7か長調or短調のⅦ♭7を考える。
(Gは主キーと違うので、ここでⅠ7は考えない)
Ⅳ7と考えるとDマイナーキー、Ⅶ♭7と考えるとAメジャーキーかAマイナーキー。
広い近親調に入っているのは、Cメジャーキー、Cマイナーキー、Dマイナーキー、Aメジャーキー、Aマイナーキー。
次にケーデンスの成立を確認すると、C7がダイアトニックコードに含まれているのはDマイナーキーのみ(Cは主キーと違うので、C7をⅠ7とは考えない)で、Dマイナーキーの場合Ⅶ♭7に当てはまり、Dマイナーキーの「Ⅳ7(SD)→Ⅶ♭7(SDM)」ケーデンスが成立している。
よってG7はDマイナーキーのⅣ7(SD)と解釈。
この場合の転調は経過的転調なので、主キーはEマイナーキーのまま。

次に<C>5小節目の「C7→B7」
C7をⅤ7と考えるとFメジャーキーかFマイナーキー。
これはどちらも狭い近親調に入っていない。
次に短調のⅣ7か長調or短調のⅦ♭7を考える。
(Cは主キーと違うので、ここでⅠ7は考えない)
Ⅳ7と考えるとGマイナーキー、Ⅶ♭7と考えるとDメジャーキーかDマイナーキー。
広い近親調に入っているのは、Gマイナーキー、Dメジャーキー、Dマイナーキー。
次にケーデンスの成立を確認すると、B7がダイアトニックコードに含まれているキーはない。
ということで、ケーデンスは成立せず。
しかし、C7を短調のⅣ7(SD)と解釈した場合のキーはGマイナーキーとなり、Gマイナーキーは主キー(Eマイナー)の広い近親調に入っているため、C7はGマイナーキーのⅣ7と解釈する。
この場合も主キーは変わらずにEマイナーキーのまま。

最後<C>6小節目の「B7→Em」は<A>6小節目と同じ。



これで楽曲分析手順2の7thコード分析は完了ですが、実は1つ気になるところがあります。
それは<C>5小節目のC7の部分なのですが、この部分は資料によってコードが異なっているのです。

私がコード進行の参考にしている「ジャズ・スタンダード・バイブル」ではC7ですが、
ネットで調べてみると、CΔ7だったりF#m7(♭5)だったりといくつかバリエーションがあります。

曲全体の流れから考えると、もともとはF#m7(♭5)だったのではないかと思います。

ちなみに、私が通っていたレッスンではCΔ7で教わりました。
この場合は、もともとF#m7(♭5)だったコードを分析した結果、EマイナーキーのⅡm7(♭5)でSDMだったので、その代理コードである同じEマイナーキーのSDMのCΔ7に置き換えることで、前のG7からCメジャーキーのⅤ7→ⅠΔ7(D→T)のケーデンスが成立し、さらに次のB7にはEマイナーキーのSDM→Dのケーデンスとなり、CΔ7がピボットコードとして両キーの橋渡しをするようになります。
(ピボットコードによる転調はフレーズのつなげ方の制約が少なく、より自由でスムーズ&滑らかなアドリブフレーズを作ることができるので、このコードの置き換えは大きなメリットがある。)

C7の場合については、ネットで調べた感じでは、次のB7に対してドミナントモーションするF#7を配置(追加)して、さらにそれを裏コードのC7に置き換えたものという説明がありました。
しかし、私がレッスンで教わった限りでは7thコードにドミナントモーションで解決するというケーデンスはありませんし(主キーと同一のキー以外では)、偽終止もできないのでいまいちな解釈な気がします。
ただ、レッスンでは「偽終止ができるかできないかは絶対的な判断基準はない」と言われてました。
もっと言えば、偽終止は「できるできない」ではなく「しやすいかしにくいか」ということでした。
偽終止できる音が一つでもあればそれは偽終止できると判断する人もいれば、偽終止できる音が複数ないとそれは偽終止できるとは言えないという人もいる。それは時代にもよる。ということです。

ちなみに、G7→C7ではCの音を使って偽終止することは出来ます。
なので、自由度は少ないですが、これをV7→Ⅰケーデンスの偽終止と考えて、次のC7→B7もBの音で偽終止するフレーズを使えば、G7→C7がCメジャーキーのV7→Ⅰケーデンス、C7→B7がBマイナーキーのV7→Ⅰケーデンスとして解釈することは可能だと思います。

ただ、上記のCΔ7の方がより良い連結方法なのではないかとは思います。
実際のところ、どちらがより良いのかはよくわからないので、ここから先はこの二つの解釈で他のコードの分析と実際のアドリブフレーズの作成までやってみて、比較してみたいと思います。

ということで、いったんここで区切ります。



One Comments

  1. 設楽 悟弘

    なかなかSAXが上達しないで悶々おじさんです。

    いいサイトに巡り合えました。
    何が問題か?
      大学時代 ビッグバンドをやっていたのですが、現在も社会人バンドに
    参加。  好き嫌いもあり、SWINGの感覚がちがっていて、やりにくいのと、メンバーの好き嫌いがあることに最近気づきました・・・・。  ブラバン的な印象。
    音楽のバックグラウンドのちがい、 生の演奏聴く経験の差 音楽人脈 等々
     それは、人のせいにしている・・・・ 

    とはいえ、自分が練習嫌いなため、腕が上がっていないのが、原因大かも知れません。力があって、引っ張っていければいいんだがな。
     練習していないと、すぐに初心者にもどってしまう!!(テナー)
    バンドでは、バリトンサックス担当。    個人的には、テナーをうまくなりたいので、テナーの練習に力を入れたいと思っています。

    とにかく、ジャムセッションで、アドリブできるようになりたいなあ という願望あります。 「日暮れて、かなり・・・道遠し」

    定年になり、本腰入れようかと思っている毎日です。

    ps)山野コンテスト みられてよかった。後輩が、今年、出ると言っていました。 ジャンプアップの賞をねらうと、  
     私が大学の時、その昔の先輩が、山野で奨励賞もらいました。  すごい大会なんですね。
      田舎の大学のバンド 群馬大学GKオールスターズ にいました。 

    また、いろいろ教えてもらうことあるかと思いますが、よろしくお願いします。

    とても、すてきなHP 
           ありがとうございます。

    設楽   2013 09 12