楽曲分析「There Will Never Be Another You」

前回まででかな~り怪しいながらも楽曲分析のやり方をまとめました。
さっそくこれを使って楽曲分析をしていきたいと思います。

1曲目は私の好きな「There Will Never Be Another You」でやってみたいと思います。

ちなみに、コード進行の参考にする曲集はこれを使います。
ジャズ・スタンダード・バイブル in E♭ セッションに役立つ不朽の227曲 (CD付き)
(納浩一 編・著)

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ジャムセッションの定番と言われる「スタンダード・ジャズ・ハンドブック」も持っているのですが、ネットで調べてみたところ、コード進行が怪しいところが多く、勉強を始めたばかりの初心者には向いていないという指摘がありまして(怪しいところを自分で修正できる上級者には良いようです)、色々と調べて信頼性の高いと評判のこの本を買いました。
さらにE♭やB♭に移調したバージョンがあるので、移調楽器奏者にも優しい!
(ちなみに、アメリカの元祖スタンダード曲集である「Real Book」も信頼性が高く移調バージョンもあるようなのですが、日本で一般的に演奏されるのと違うキーになっている曲が多いらしいので、総合的に判断して今回の選択になりました)

ということで、これから書いていくコードはE♭に移調されたコードです。

<A>
|CΔ7      |        |Bm7(♭5)    |E7(♭9)    |

|Am7       |D7       |Gm7      |C7      |

<B>
|FΔ7      |B♭7(♯11)   |CΔ7      |Am7      |

|D7       |        |Dm7      |G7      |

<C>
|FΔ7      |B♭7(♯11)   |CΔ7      |F♯m7(♭5) B7 |

|C6   F7(♯11)|Em7   A7   |Dm7   G7  |C6  (G7)  |

この中でダイアトニックコードでないコードは「C6」ですが、音楽理論(準備編その3)にまとめた通りこれはトニックの代理コードと考えて「CΔ7」と置き換えて進めていきます。

※曲集本には最後の段のC6→F7(♯11)はカッコつきで(Em7→B7)と書いてある。
C6はCメジャーキーのトニックで、Em7も同じCメジャーキーのトニック(代理)、
B7はF7の裏コードなので、置き換えてもOKということか?
ちなみに、最後のC6の(G7)は最初のCΔ7に戻るターンバック。


1.主キーの推測

譜面を見ると調号は何もなし、さらに曲の最初と最後のコードがCΔ7で最後のケーデンスがCメジャーキーのドミナントケーデンスになっています。
ということで主キーは「Cメジャー」と推測。

ついでにCメジャーキーの近親調を確認します。
(青い点線の中が狭い近親調)



2.続いて曲中の7thコードとその次のコードとセットにしてキーを推測していきます。

まず4小節目の「E7(♭9)→Am7」
これはE7をⅤ7と考えるとAメジャーキーかAマイナーキー。
このうちAマイナーキーが狭い近親調に入っている。
さらにケーデンスが成立しているか確認すると、Am7がAマイナーキーのⅠm7に当てはまり、
Aマイナーキーの「Ⅴ7→Ⅰm7」ケーデンスが成立しているので、この解釈を採用。
このときの転調は経過的転調なので、主キーはCメジャーキーのまま。
(ちなみに「♭9」がついているのは、アドリブのフレーズを作るときはハーモニックスケールを使えということなのかな?)

次に6小節目の「D7→Gm7」
D7をⅤ7と考えるとGメジャーキーかGマイナーキー。
このうちGメジャーキーが狭い近親調にはいっている。
さらにケーデンスの成立を確認すると、Gm7がGマイナーキーのⅠm7に当てはまり、
GメジャーキーからGマイナーキーへの同主調の転調を含んだ「Ⅴ7→Ⅰm7」ケーデンスが成立しているので、この解釈を採用。
このときの転調は経過的転調なので、主キーはCメジャーキーのまま。

次、8小節目の「C7→FΔ7」
C7をⅤ7と考えるとFメジャーキーかFマイナーキー。
このうちFメジャーキーが狭い近親調に入っている。
さらにケーデンスの成立を確認すると、FΔ7がFメジャーキーのⅠΔ7に当てはまり、
Fメジャーキーの「Ⅴ7→ⅠΔ7」ケーデンスが成立しているので、この解釈を採用。
このときの転調は経過的転調なので、主キーはCメジャーキーのまま。

次、10小節目の「B♭7(♯11)→CΔ7」
B♭7(♯11)をⅤ7と考えるとE♭メジャーキーかE♭マイナーキー。
どちらも狭い近親調に入らないので、次に短調のⅣ7か長調or短調のⅦ♭7を考える。
(B♭は主キーと違うので、Ⅰ7は考えない)
Ⅳ7と考えるとFマイナーキー、Ⅶ♭7と考えるとCメジャーキーかCマイナーキー。
広い近親調に入っているのは、E♭メジャー、Fマイナー、Cメジャー、Cマイナーキー。
次にケーデンスの成立を確認すると、CΔ7がダイアトニックコードに含まれているのはCメジャーキーのみで、Cメジャーキーの場合ⅠΔ7に当てはまり、Cメジャーキーのケーデンスが成立している。
よってB♭7(♯11)はCメジャーキーのⅦ♭7(SDM)と解釈。
この場合の転調は経過的転調なので、主キーはCメジャーキーのまま。
(ちなみに「♯11」がつくのはメジャーキーのⅦ♭7(SDM)しかないので、もともとこれはそう解釈するように著者が親切に教えてくれているのかもしれない)

次13小節目の「D7→Dm7」
D7をⅤ7と考えるとGメジャーキーかGマイナーキー。
このうちGメジャーキーが狭い近親調にはいっている。
さらにケーデンスの成立を確認すると、Dm7はGメジャーキーとGマイナーキーのTではない。
では偽終止でつながるか?
準備編に書いた「よくあるパターン」にはないので、偽終止は不可と判断。
次に短調のⅣ7か長調or短調のⅦ♭7を考える。
(Dは主キーと違うので、Ⅰ7は考えない)
Ⅳ7と考えるとAマイナーキー、Ⅶ♭7と考えるとEメジャーキーかEマイナーキー。
広い近親調に入っているのは、Gメジャーキー、Gマイナーキー、Aマイナーキー、Eメジャー、Eマイナーキー。
次にケーデンスの成立を確認すると、Dm7がダイアトニックコードに含まれているのはAマイナーキーのみで、Aマイナーキーの場合Ⅳm7に当てはまり、Aマイナーキーの「Ⅳ7(SD)→Ⅳm7(SDM)」ケーデンスが成立している。
(GメジャーのミクソリディアンスケールとGマイナーのドリアンスケールのダイアトニックコードにDm7があるが、準備編で書いたようにこの2つのスケールは主キーと一致する場合のみ使うので、今回は考えない)
よってD7はAマイナーキーのⅣ7(SD)と解釈。
この場合の転調は経過的転調なので、主キーはCメジャーキーのまま。

次16小節目の「G7→CΔ7」
これは主キーの「Ⅴ7→ⅠΔ7」に当てはまるので、そのまま解釈。

次20小節目の「B7→C6(Em7)」
B7をⅤ7と考えるとEメジャーキーかEマイナーキー。
このうちEマイナーキーが近親調に入っている。
さらにケーデンスの成立を確認すると、Em7がEマイナーキーのⅠm7に当てはまり、
Eマイナーキーの「Ⅴ7→Ⅰm7」ケーデンスが成立しているので、この解釈を採用。
この場合の転調は経過的転調なので、主キーはCメジャーキーのまま。

次21小節目の「F7(♯11)(B7)→Em7」
これはB7→Em7だと20小節目と同じ。
F7(♯11)→Em7だと、Ⅴ7と考えるとB♭メジャーキーかB♭マイナーキー。
どちらも狭い近親調に入らないので、次に短調のⅣ7か長調or短調のⅦ♭7を考える。
(Fは主キーと違うので、Ⅰ7は考えない)
Ⅳ7と考えるとCマイナーキー、Ⅶ♭7と考えるとGメジャーキーかGマイナーキー。
広い近親調に入っているのは、B♭メジャー、Cマイナー、Gメジャー、Gマイナーキー。
次にケーデンスの成立を確認すると、Em7がダイアトニックコードに含まれているのはGメジャーキーのみで、Gメジャーキーの場合Ⅵm7(T)に当てはまり、Gメジャーキーのケーデンスが成立している。
よってF7(♯11)はGメジャーキーのⅦ♭7(SDM)と解釈。
この場合の転調は経過的転調なので、主キーはCメジャーキーのまま。

次22小節目の「A7→Dm7」
A7をⅤ7と考えるとDメジャーキーかDマイナーキー。
このうちDマイナーキーが近親調に入っている。
さらに次のDm7とDマイナーキーの「Ⅴ7→Ⅰm7」ケーデンスが成立しているので、
この解釈を採用。
経過的転調なので、主キーはCメジャーキーのまま。

次23小節目の「G7→C6」
C6はCΔ7と置き換えて、あとは16小節目と同じ。

疲れたので、いったんここで区切ります。
続きは次の投稿で。




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